吉永隆山篆刻(てん刻)書店

題名は洒落 ですが・・・・篆刻学習で吉永隆山が、お勧め、気に入っている、気になっている書籍案内です。初歩向けというコンセプトで紹介していますので、あまりお高い本はありません。ご参考にしてください。
索引:字書  テキスト  印譜・作品集・その他など
1.字書

角川書道字典
伏見冲敬編 角川書店刊 5800円
解説:この字書の特徴は、原典がそのままコピーで掲載されていることです。小篆関係では、「説文篆文」「秦代小篆」「清代作家による篆書体」そして、金文もが出典名とともに、プラス甲骨文まで掲載されていますので、便利な字書です。これは編者が伏見冲敬先生ということもあるのでしょうか、充実しています。1339〜1344ページには、説文解字建首まで掲載されている一種「変わった」字書です。
 実際の使用法としては、6ページから20ページまでに収蔵碑帖書人目録がありますので、これを参考にしましょう。例えば、6ページには秦代として、「泰山刻石」など3つの碑名が載っています。金文に関しても「金文器名」の一覧が18〜20ページに掲載されています。これと21ページ以降の「中国書道史約述」を読んでいただければ、概略的な書体変遷は理解できると思います。
 上記の角川の「書道字典」があれば、小篆については充分と考えます。「秦代小篆」の直接的資料である「泰山刻石」などの字体が掲載されているのですから充分過ぎるものです。そして、金文も「金文器名」(出典名)とともに掲載されています。

朝陽字鑑精萃
高田忠周編 西東書房刊 6500円
解説:上記の角川書道字典が「小篆」「金文」用とすれば、こちらは主に「印篆」用ということになります。ポピュラーに使われている篆刻字林と同時代の字書ですが、掲載法が篆刻字林とかなり異なります。 この字書は、角川書道字典と同様に出典(例えば印譜名、原拓名)が掲載されているのです。したがって、、その出典原典を確認することが可能で、より実態に近づくことができます。ただし、使いこなすには教養が必要でしょう。この字書は、変わった字形(問題がある字形)なども多く、指導を受けない初心者が使うと「あらぬ」方向に行きやすいという字書ですので、この点には注意する必要があります。しかし、本格的な篆刻を志す方には必須の字書ですので、是非揃えたいです。
 ちなみに、篆刻字林についてですが、これも指導を受けないでの使用は難しいです。これは、もともと印判屋さん用ですので、「実用の印判」を彫るため使うのに便利なように、国字なども編者の服部耕石先生が作字して掲載<(補)と表示、他に(徐)、(楊)と五代、元代の追補字も掲載>しているので、その点では便利です。ただし、当然ですが、作字した字は、古典のある字と峻別して認識し、使用する必要があります。

大系漢字明解
高田忠周編 冨山房刊 6800円
下の「字統」と同様に、文字の字義を調べるための本です。学問的には古いのですが、説文に基づいているということと、字数が多いので、実用的には、こちらのほうが「字統」より便利です。これは新本もありますが、主に古本を探すこととなります。
昭和初期に刊行された本、昭和40年ごろ名著刊行会より刊行された本、昭和50年ごろ、判元の冨山房刊より復刻されたものの3種類があります。だいたい2000円〜5000円程度が相場です。昭和初期のものが一番安い2000円で、新しいものは5000円以上となります。もちろん古本のほうは、コンディションによります。

字統 
白川静編 平凡社刊
字形学的な字書として最古の〔説文解字〕に批判的な吟味を加えています、とのことです。

2.テキストとして
書道講座(第6巻)篆刻
西川寧編 二玄社刊 
かなり古い本ですが、篆刻のテキストとしては、まとまった本です。これは必須の本でしょう。この本を熟読すれば、かなりのレベルで篆刻を理解(技法なども含め)できます。篆刻のテキスト本が、この本以降何冊も出版されていますが、これを凌駕する本は出ていません。近年、復刻されて発売されています。


3.印譜・作品集・その他読物など
篆刻全集(2)官印、私印
小林斗庵編 二玄社刊 2400円
全10巻のシリーズですが、まず漢印が掲載されているこの(2)を手に入れましょう。これのつぎには清代作家の篆刻全集7(趙之謙・徐三庚)→篆刻全集8呉昌碩)→篆刻全集10(日本)という順番で揃えるとよいでしょう。
以下篆刻全集(2)の説明
本書は、名家の篆刻作品を、時代・作家別に精選・収録したものである。秦漢〜南北朝時代(前三世紀〜六世紀頃)の官印および私印を登載。印影の配列は封泥、官・私印、肖生印に大別し、概ね各々の時代・国別に配列し官印は各時代の官位毎に配し、私印は様式・形式等を考慮し、姓字の部首によって配している。
【目次】
封泥(右丞相印/少府/都船丞印 ほか)/官印(秦/漢初/前漢 ほか)/私印(秦/漢初/漢 ほか)/肖生印

漢字百話
白川静著 中央公論新社 720円
私の愛読書です。毎晩寝る前に、印譜を眺めたり、この本を拾い読みして楽しんでいます。
以下説明
太古の呪術や生活の姿を伝える、漢字の世界。厖大な資料考証によって、文字の原始の姿を確かめ、原義を鮮やかに浮かび上がらせる。「白川静の世界」入門に絶好の、刺激的な書。
【目次】
1 記号の体系/2 象徴の方法/3 古代の宗教/4 霊の行方/5 字形学の問題/6 字音と字義/7 漢字の歩み/8 文字と思惟/9 国字としての漢字/10 漢字の問題

その他、メルマガ・ブログ掲載の図書


新修墨場必携(上)
山本正一編 法政大学出版局 900円
篆刻作品の撰文に 新修墨場必携(下)もあり

「漢委奴国王」金印・誕生時空論
鈴木勉 著 出版社: 雄山閣  2,940円
私の大学時代の先輩(東京学生書道連盟の先輩)でNPO工芸文化研究所理事長鈴木勉氏(橿原考古学研究所、早稲田大学)の著作。執筆にあたり「釈文」などについて協力させていただいたため、私の名前が「注」に紹介されている。


復元七支刀
古代東アジアの鉄・象嵌・文字
鈴木勉 /河内國平 著 出版社: 雄山閣  5,600円2

定説をくつがえす七支刀鋳造復元
三つの要素技術<刀身・象嵌・文字>が緊張した古代東アジアの外交をあぶり出す

NPO工芸文化研究所理事長鈴木勉氏は「三角縁神獣鏡 復元製作実験」などの実績を残されている。復元製作に関する著書で、新聞・テレビでかなり取り上げられたので、考古学に興味のある方は、ご覧下さい。

金印偽造事件
「漢委奴國王」のまぼろし
三浦佑之著 幻冬舎新書 720円

上記鈴木勉氏の3論文が引用されているという本。以下その論文
・廣陵王璽と漢倭奴国王印は兄弟印か 2000 11 『青陵』106号
・彫金技術からみた西アジアの印章と漢代の金印 2003 4 『ORIENTE』27号
・漢倭奴国王印は光武帝が下賜した印か?−廣陵王璽との技術的距離を考える− 2003 11 『書論』33号

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